デジタル遺品の整理帳

親が認知症になる前にスマホとネット口座を整理する 国民生活センターの助言と銀行の扱い

内容の確認日: 2026年11月4日

親が認知症になる前にしておきたいのは、二つです。スマホのロックを家族が開ける方法を決めておくこと。ネット銀行やネット証券などの口座を、名前と連絡先の一覧にしておくこと。判断能力が下がってからでは、本人に聞いて整理することが難しくなります。

銀行は、家族でも本人の預金を払い出せないとしています(全国銀行協会)。国民生活センターの見守り新鮮情報第505号は、亡くなったあとの相談事例を扱った回です。認知症を直接の題材にした内容ではありませんが、勧めている準備はそのまま使えます。この記事は一般的な情報で、個別の判断は弁護士、司法書士、金融機関の窓口などの専門家にお願いします。内容は2026年11月4日に確認しました。

国民生活センターが伝えている準備

ロック画面が表示されたスマートフォン
写真: Acabashi / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

国民生活センターの見守り新鮮情報第505号は、2025年2月20日に公表された「始めましょう!デジタル終活」です。事例が二つ載っています。一つは、亡くなった兄のネット銀行の口座を確かめるために、携帯電話会社の店舗へスマホの画面ロックの解除を頼んだ話です。店では「初期化はできるが、画面ロックの解除はできない」と言われました。もう一つは、夫が亡くなったあとにスマホのセキュリティのサブスクが残っていて、解約にIDとパスワードが必要と言われた話です。

ひとこと助言は、次のとおりです。

  • 遺族が故人のスマホ等をロック解除できるようにしておく
  • 名刺サイズの紙にパスワードなどを書き、修正テープで隠した「スマホのスペアキー」を、家族がみつけられる場所に保管する
  • 毎月の支払いが発生しているネット上の契約は、サービス名・ID・パスワードを整理する
  • エンディングノートの活用を検討する

2024年11月の国民生活センターの発表資料にも、ネット銀行の契約先が分からずスマホも開けない相談が載っています。資料は、ネット上の資産は本人以外が実態をつかみにくいと述べています。

認知症になってからでは家族に難しいこと

信用金庫の支店の外観
写真: Suikotei / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

全国銀行協会の「金融取引の代理等に関する考え方」は、銀行の預金は基本的に本人の資産で、払い出しには本人の意思確認が要るため、家族といえども預金者の預金を払い出せないとしています。

本人の認知判断能力が低下したときの銀行の対応は、同じ文書に次のように書かれています。

  • 補助人・保佐人の同意を確認して本人と取引する。または成年後見人や任意後見人を通じた代理取引を行うのが一般的
  • 本人から親族に有効な代理権が与えられ、銀行が任意代理人の届出を受けているときは、その任意代理人と取引できる
  • 親族による無権代理の取引は、本人の判断能力が低下し、成年後見制度を使っていない(使えない)ときに限る、極めて限定的な対応

ネット銀行やネット証券が同じ扱いをするかは、この文書だけでは分かりません。各社の公式ヘルプで、代理人の制度があるかを確かめます。後見の制度を使うかどうかは、本人と家族で話し合い、専門家に相談して決めます。

スマホのロック解除を家族に伝える

カードが入ったカードケース
写真: Fructibus / CC0(Wikimedia Commons)

国民生活センターの発表資料は、パスワードを日頃から共有しておくと、思わぬトラブルになり得るとも述べています。そのうえで、緊急時の工夫として次の手順を紹介しています。

  1. 名刺大の紙にパスワードなどを書き、パスワードの部分に修正テープを2〜3回重ねて貼る
  2. 家族が必要なときに、コインなどで修正テープを削って読む

誰かが修正テープを削ったと気付いたときは、すぐにパスワードを変えます。パスワードをそのまま書かず、家族にだけ分かる合言葉を書く方法もあります。

国民生活センターの2024年の発表資料は、AppleとGoogleがアカウントにアクセスできる人を指名できるサービスを提供していることも伝えています。これらは、アカウントの持ち主に何かあったときに備える設定で、持ち主が事前に行います。

認知症が進むと、本人がパスコードを思い出せなくなることがあります。元気なうちに、画面ロックのパスコード、Apple IDやGoogleアカウントのパスワードの置き場所を決めます。パスワードの残し方は家族にパスワードを残す方法に、デジタル終活の全体は生前にできるデジタル終活にあります。AppleとGoogleの設定はAppleとGoogleのアカウントを生前に整理するで説明しています。

ネット銀行・証券の一覧を作る

キャップを外した万年筆
写真: Auyon / CC BY-SA 3.0(Wikimedia Commons)

ネット上の契約は、紙の書面ではなくメールで届くことがあり、家族が見つけにくいと国民生活センターは述べています。一覧には、次の項目を入れておくと役に立ちます。

項目書く内容の例
サービス名ネット銀行、ネット証券、コード決済、電子マネーなどの名前
口座の種類普通預金、投資信託、積立の有無
登録のメールアドレス・電話番号通知が届く先。家族が確認できる場所
ログインIDの書き場所パスワードそのものではなく、保管場所を書く
毎月の引き落としサブスクの名前と金額

この記事の提案として、一覧にはパスワードを書かず、保管場所だけを書きます。一覧は年に一度など、日を決めて見直します。 国民生活センターの発表資料には、実店舗がない事業者では、必要書類を郵送でやり取りするため、相続の手続きに時間がかかることがあるとあります。コード決済の相続手続きが1か月以上たっても終わらないという相談事例も載っています。法務省と日本司法書士会連合会のエンディングノートは、国民生活センターが整理の道具として挙げています。

本人が亡くなったあとの手続きは、別の記事にまとめました。故人のネット銀行・ネット証券の見つけ方と相続の手続きと、故人のスマホのロックが解除できないときです。

家族で話し合うときのすすめ方

机の上のノートパソコンとマグカップ
写真: Ryan Riggins / CC0(Wikimedia Commons)

預金の話は、親にとって話しにくいことがあります。この記事の提案は、「どの会社のサービスを使っているか」から聞くことです。金額や残高まで書く必要はありません。

決めることは、次の三つです。

  • スマホのロック解除の方法を、誰が、どこに保管するか
  • 一覧を、どこに置き、いつ見直すか
  • 銀行の代理人や後見の制度を、いつ誰が調べるか

家族だけで整理しにくいときは、外部のサービスや専門家に頼む手もあります。サービスの中身と費用は、事業者の公式の説明で比べます。

出典

いずれも2026年11月4日に確認しました。銀行や証券会社ごとの代理人の扱いは、各社の最新の案内で確かめてください。

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