電子書籍・ゲーム・音楽の購入データは相続できるか 民法896条と各社の利用規約で確かめたこと
電子書籍・ゲーム・音楽の購入データを、家族が引き継げるかどうかは、サービスの利用規約で決まる部分が大きいです。この記事で開いた4社の規約(Apple、Google Play、PlayStation、Steam)は、いずれも、購入したものは所有ではなく利用の許諾(Steamでは「利用権」)だという趣旨で書かれていました。アカウント情報の共有や譲渡を禁じる記載も、3社にありました。
PlayStationの規約には、アカウントは一身専属的に帰属し、第三者に相続させることはできない、と明記されています。残りの3社の規約には、相続についての直接の記載を見つけられませんでした。この記事は一般的な情報で、個別の判断は弁護士などの専門家にお願いします。内容は2026年11月4日に確認しました。
相続の原則と「一身専属」

民法896条は、相続人は相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を引き継ぐと定めています。ただし書きがあり、被相続人の一身に専属したものは引き継がれません。
電子書籍やゲームの購入データが、この「一身専属」にあたるかどうかは、条文からは分かりません。今回、この点を直接判断した裁判所の判決や官公庁の見解は、確かめられませんでした。そのため、この記事は法律上の結論を示しません。
確かめられたのは、事業者が規約に何を書いているかです。規約が相続を認めないと書いていても、その定めが法律上どこまで効くのかは、また別の問題です。規約の読み方と法律の評価を分けて考えてください。
「購入」は所有ではなく利用の許諾

画面に「購入」と出ても、規約では中身が違うことがあります。各社の規約には、次のように書かれています。
- Apple(Appleメディアサービス利用規約、最終更新日2026年9月14日): App Storeで取得できるアプリは、使用を許諾するものであり、販売するものではない。購入したコンテンツには通常、引き続きアクセスできるが、ごくまれに本サービスから削除され、ダウンロードやアクセスができなくなる場合がある。
- Google Play(Google Play利用規約、2026年7月29日の版): コンテンツは、営利目的以外の個人的な使用に限り、保存・閲覧・利用する非独占的な権利として許諾される。第三者への販売、賃貸、リース、移譲、譲渡などは、明示的に承認された方法を除いて禁止されている。
- PlayStation(PlayStationオンラインサービス利用規約、第17版2026年4月): 「購入」「販売」などの表現は、知的財産権や所有権などの権利が利用者に移転することを意味しない。サービス・コンテンツは、有償か無償かを問わず譲渡できない。
Steamの規約(最終更新日2026年9月10日)は、アカウントの利用権や、利用権を根拠にした権利を第三者へ売ったり譲渡したりすることはできない、という趣旨を書いています。
こう見ると、購入データは「本やCDのように家族へ手渡せる物」とは別の性質です。家族が使い続けられるかは、アカウントごと引き継ぐのか、データだけ使うのかで、さらに分かれます。
アカウントの譲渡と共有について規約が書いていること

購入データはアカウントに結びついています。そのアカウントの扱いを、規約で確かめました。
- PlayStation: アカウント保有者に一身専属的に帰属し、第三者に相続させることはできない。サインインID・パスワード・オンラインIDを第三者と共有してはならない。
- Steam: アカウントは厳重に個人的なもので、ユーザー以外の第三者に対して、アカウントを譲渡することはできない。
- Google Play: アカウントの詳細情報を安全に保管し、他者と共有してはならない。複数のGoogleアカウントを持つ場合にコンテンツを転送できることがあるが、自分が各アカウントの所有者であることなどが条件。
- Apple: アカウントの機密性とセキュリティの維持は利用者の責任。一方で、規約は「故人アカウント管理連絡先」を追加・通知・削除できると書き、連絡先によるアクセスは制限される、と案内している。
PlayStationの規約は、アカウントが削除されると、購入したアイテムやサブスクリプション、ウォレット内の未使用残高についての返品や返金は行われない、とも書いています。
AppleとGoogleには、亡くなったあとのために設定できる仕組みがあります。内容と設定の手順は、AppleとGoogleのアカウントを整理する記事に書きました。パスワードを家族に伝える方法はパスワードの残し方の記事で説明しています。
ここで気をつけたいのは、家族が故人のパスワードを使ってログインする方法です。PlayStationとGoogle Playの規約は、ID・パスワードなどのアカウント情報を他者と共有してはならないと書いています。事業者がこの場面を違反とみなすかどうかは、確かめられませんでした。ログインする前に、事業者の窓口に聞いてください。
残高・ポイント・ウォレットの扱い

購入データとは別に、ストアの残高が残っていることがあります。規約には次のように書かれています。
- PlayStationのウォレット: 前払式支払手段で、法律で求められる場合か規約が明示的に認める場合を除き、一度チャージすると払戻や振替はできない。アカウントが削除されると未使用残高の返金はない。
- Steamウォレット: チャージした資金は、返金と譲渡ができない。個人財産権に該当せず、Steam以外では価値を認められず、現金とは交換できない。引取人がいない財産は、該当機関に引き渡されることがある、とも書かれている。
残高の相続にどう触れているかは、サービスごとに違います。Steamの規約のように、引取人がいない財産に触れているものもあります。自分では判断せず、事業者の問い合わせ窓口と専門家に確認します。
電子マネー、ポイント、暗号資産など、他の種類の相続は暗号資産・電子マネー・ポイントの記事で説明しています。この記事では、ストア残高に絞りました。
今のうちに家族ができること

規約が事業者ごとに違うため、一律の手順はありません。次の順で進めます。
- どのサービスに何を持っているかを一覧にする。サービス名、使っているアカウント、サブスクの有無、ストア残高を書く。
- 各サービスの利用規約で「アカウント」「譲渡」「相続」「死亡」の語を探す。
- 相続についての記載がなければ、問い合わせ窓口に、故人のアカウントの扱いを聞く。
- 有料の定期サービスは、請求が続かないよう早めに止める。見つけ方と止め方はサブスクの解約の記事にあります。
- 生前なら、デジタル終活の記事のとおり、アカウントの一覧と連絡先の指定を済ませておく。
Amazon(Kindle)の利用規約は、確認の時点でページを開けなかったため、この記事では扱いません。ほかに使っているサービスも、それぞれの規約で確かめてください。
出典
- e-Gov法令検索 民法(896条) https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- Apple Appleメディアサービス利用規約(最終更新日2026年9月14日) https://www.apple.com/jp/legal/internet-services/itunes/jp/terms.html
- Google Play 利用規約(2026年7月29日) https://play.google.com/intl/ja_jp/about/play-terms/index.html
- ソニー・インタラクティブエンタテインメント PlayStationオンラインサービス利用規約(第17版・2026年4月) https://www.playstation.com/ja-jp/legal/terms-of-service/
- Valve Steamサブスクライバー契約(最終更新日2026年9月10日) https://store.steampowered.com/subscriber_agreement/japanese/
いずれも2026年11月4日に確認しました。利用規約は改定されることがあるため、問い合わせる前に最新の版を開いてください。