故人のネット銀行・ネット証券の見つけ方と相続の手続き
ネット銀行やネット証券は、通帳や郵便が届かないことが多く、家族が口座に気づきにくい財産です。証券口座は、証券保管振替機構(ほふり)の「登録済加入者情報の開示請求」で、口座のある証券会社の一覧を有料で調べられます。銀行口座は、マイナンバーと結びついた口座に限り、預金保険機構の「相続時預貯金口座照会」で調べる方法があります。
口座が見つかったあとは、各金融機関の相続手続きに進みます。全国銀行協会の説明では、金融機関に連絡すると口座の取引は原則として止まります。この記事は一般的な情報で、個別の判断は弁護士・司法書士・税理士などの専門家にお願いします。内容は2026年11月3日に確認しました。
まず手元の手がかりを集める
公的な照会には費用と時間がかかります。先に、故人の身の回りにある手がかりを集めておくと、照会の結果と照らし合わせやすくなります。探す場所の例は次のとおりです。
- メールの受信箱(取引報告書や入出金のお知らせ)
- スマホに入っているアプリ
- キャッシュカードやクレジットカード
- 確定申告の控えや、年末に届く書類
スマホが開けない場合の考え方は、故人のスマホのロックが解除できないときにまとめています。国民生活センターの資料では、実店舗のない事業者だと手続きが郵送になり時間がかかることがあると注意しています。

証券口座は「ほふり」の開示請求で探す
日本証券業協会は、口座のある証券会社が分からないときは、証券保管振替機構(ほふり)へ直接開示請求するよう案内しています。ほふりの公式ページによると、分かることと分からないことは次のとおりです。
- 分かること: 開示した時点で、上場株式などの口座がある証券会社・信託銀行などの一覧
- 分からないこと: 銘柄名、取引の履歴、保有残高
- 対象外: ほふりが扱わない非上場株式・外国株式・国債・社債などの口座
請求は郵送だけで、窓口はありません。受け付けたあとの取り消しはできません。添付する書類はコピーを全ページ出し、返却はされません。結果は「登録済加入者情報通知書」として、代金引換の簡易書留で届きます。届け先は、請求する人の本人確認書類に書かれた住所です。
費用は、相続人が請求する場合で7,700円です。法定相続情報一覧図のコピーを出すと6,050円になります。遺言執行者が請求する場合も6,050円です。2件目以降は1件ごとに1,100円が加わります。該当する口座がなくても費用はかかります。問い合わせ先は、ほふりの開示請求事務センター(03-5665-3642、土日祝と年末年始を除く10時から16時)です。
証券会社が分かったら、その会社に連絡して残高と手続きを確認します。

銀行口座は「相続時預貯金口座照会」も使える
銀行には、ほふりのような一覧の仕組みはありません。そのかわり、預金保険機構の「相続時預貯金口座照会」という制度があります。ここでは、GMOあおぞらネット銀行が掲載している制度の案内をもとに紹介します。
- 調べられるのは、故人が生前にマイナンバーを結びつけていた口座だけです
- 照会できるのは、亡くなってから10年までです
- 申し込みは金融機関の窓口で行います。故人と取引がなかった金融機関でも、受付を委託されていれば申し込めます
- 手数料は1件5,060円(税込)で、返金はありません
- 通知までの目安は約1か月です
- 通知されるのは金融機関名・支店名・口座の種類・口座番号などで、残高は含まれません
申し込む人が用意する主な書類は次の3つです。故人のマイナンバーを示す必要はなく、ほかの相続人の同意もいりません。通知は転送不要の簡易書留で届きます。
- 故人の住民票の除票の写し
- 相続関係が分かる戸籍謄本・抄本、または認証文付きの法定相続情報一覧図の写し
- 申し込む人の本人確認書類2点
マイナンバーと結びついていない口座は、この照会には出てきません。照会で何も出なかったからといって、口座がないとは言い切れません。手がかりのある銀行には、直接問い合わせてください。

預金の相続手続きの流れ
全国銀行協会は、預金の相続手続きを4つの段階で説明しています。
- 取引のある金融機関に連絡する。連絡と同時に、口座の取引は原則として止まります
- 必要な書類を集める。遺言書があるか、遺産分割協議書があるかで書類が変わります
- 金融機関所定の相続手続きの書類に記入し、署名・押印して出す
- 払い戻しを受ける。日数がかかる場合があります
投資信託など預金以外の商品は、別の手続きになります。

遺産分割が決まる前に葬儀費用などが必要になったときは、預貯金の仮払い制度があります。全国銀行協会の説明では、1人が単独で受け取れる上限は「亡くなった時点の預金残高×3分の1×その人の法定相続分」です。さらに、1つの金融機関につき150万円までという上限もあります。別の方法として、家庭裁判所の保全処分があります。この場合は仮払いを申し立て、金額は裁判所が決めます。
書類集めや金融機関とのやり取りが重なるときは、専門家に任せる方法もあります。
NISA口座があったときの届出
故人がNISA口座を持っていた場合は、別の届出があります。日本証券業協会のNISAのQ&A(2026年9月版)によると、相続人は死亡を知ったあと遅れずに「非課税口座開設者死亡届出書」を証券会社に出します。出すまでに受け取った配当などは、さかのぼって課税されます。複数の会社にNISA口座がある場合は、すべての会社に出します。
相続した株式などは、相続人のNISA口座には移せません。相続人の特定口座か一般口座に入ります。取得日は相続の日で、取得価額は相続の日の時価になります。
暗号資産や電子マネーの相続は、暗号資産・電子マネー・ポイントの相続で扱っています。

出典
- 証券保管振替機構(登録済加入者情報の開示請求) https://www.jasdec.com/procedure/shareholders/disclosure/
- 証券保管振替機構(開示請求の手続き) https://www.jasdec.com/procedure/shareholders/disclosure/direct/
- 日本証券業協会(口座のある証券会社が分からない場合) https://www.jsda.or.jp/shijyo/minasama/shokai_hohuri/20200907175501.html
- 日本証券業協会「NISA制度に関するQ&A」(2026年9月) https://www.jsda.or.jp/shijyo/seido/tax/files/202609_nisa_qa.pdf
- 全国銀行協会(預金相続の手続の流れ) https://www.zenginkyo.or.jp/article/tag-f/7704/
- 全国銀行協会(遺産分割前の預貯金の払戻し制度) https://www.zenginkyo.or.jp/article/life/others/14668/
- GMOあおぞらネット銀行(相続時預貯金口座照会の案内・預金保険機構の制度) https://gmo-aozora.com/support/gyomudocuments/souzokujisyoukaiannai.pdf
- 三井住友銀行(相続時預貯金口座照会のお申込みにあたって・預金保険機構の制度) https://www.smbc.co.jp/mynumber/pdf/mynumber_kitei02.pdf
- 国民生活センター「今から考えておきたい『デジタル終活』」(2024年11月20日) https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20241120_1.html
いずれも2026年11月3日に確認しました。相続時預貯金口座照会は、預金保険機構の案内を金融機関が掲載した資料で確認しています。