デジタル遺品の整理帳

デジタル遺品の整理業者に頼む前に確かめること 見積・契約書・許可の見方

内容の確認日: 2026年11月4日

デジタル遺品の整理を業者に頼む前に、確かめることは3つあります。パスワードが分からない機器は、業者でも開けるとは限らないこと。見積と契約書に、作業内容と追加料金が書いてあること。遺品の処分や買い取りを引き受ける業者が、必要な許可を持っていること。

国民生活センターは2024年11月の発表で、故人のスマホやパソコンのパスワードが分からない場合、第三者がロックを解除するのは困難だと説明しています。業者の広告より先に、この前提を押さえておくと選びやすくなります。この記事は一般的な情報で、個別の判断は弁護士・司法書士や消費生活センターなどの専門家にお願いします。内容は2026年11月4日に確認しました。

業者に頼む前に、家族でできること

使用済みのノートパソコン
写真: André Karwath aka Aka / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

国民生活センターの資料には、スマホの画面ロックの解除を携帯電話会社の店舗に頼んだところ、「初期化はできるが、画面ロックの解除はできない」と言われた相談事例が載っています。初期化すると中のデータは消えます。解除と初期化は別のものです。

業者へ連絡する前に、次を済ませておくと費用も時間も減らせます。

  • 手帳、エンディングノート、パスワード管理アプリ、付箋など、パスワードの手がかりを探す
  • Apple、Google、Microsoftなど、提供会社が用意している故人のアカウントの手続きを確かめる
  • クレジットカードや銀行の明細、郵便物から、契約しているサービスを洗い出す

国民生活センターは、ID・パスワードが分からなくても契約先の事業者が分かれば、遺族から連絡して手続きできる場合があると説明しています。機器を開けることと、契約を整理することは別の作業です。機器の中の探し方は故人のパソコンのパスワードが分からないときと故人のスマホのロックが解除できないときに書きました。

データ復旧とパスワード解除で頼める範囲

ふたを開けたノートパソコン用のハードディスク
写真: Evan-Amos / CC BY-SA 3.0(Wikimedia Commons)

データ復旧の業者が主に引き受けるのは、壊れた記録媒体からデータを取り出す作業です。パスワードを知らない人が、鍵のかかった機器を開ける作業とは性質が違います。広告の言葉だけでは、どちらの話をしているのか分かりません。

「パスワード解除」をうたう業者に問い合わせるときは、次を言葉と書面で確かめます。

  • 対象は機器そのものか、インターネット上のアカウントか
  • 自分の機種と状態(型番、OSのバージョン、暗号化の有無)で、解除できると言っているか
  • 解除できなかった場合の費用はいくらか。調査だけでも費用がかかるか
  • 機器を預ける期間と、返ってきたときに初期化されていないか
  • 取り出したデータの扱い(コピーの保管や削除)をどう説明しているか

インターネット上のアカウントは、また別の話です。不正アクセス禁止法の第3条は「何人も、不正アクセス行為をしてはならない」と定めています。第2条4項は、他人の識別符号(IDやパスワードなど)を入力して、制限されている利用ができる状態にする行為を不正アクセス行為の一つとしています。ただし、アクセス管理者や識別符号に係る利用権者の承諾を得てするものは除かれています。故人のアカウントに遺族が入る場合にこの規定がどう当てはまるかは、法律の条文だけでは決められません。サービス提供会社の案内に沿って手続きするか、弁護士に相談してください。

業者が「どんなアカウントでも入れる」と説明するなら、その根拠を聞いてください。答えが曖昧なら、契約を急がないほうが安全です。

見積と契約書で確かめる項目

机の上に開いたノートとペンと眼鏡
写真: Shixart1985 / CC BY 2.0(Wikimedia Commons)

デジタル遺品を含めて遺品整理を頼むときは、国民生活センターの注意喚起が参考になります。2018年7月の発表では、遺品整理サービスの相談が2013年度に73件、2016年度に114件、2017年度に105件寄せられたと報告しています。相談事例には、見積もりの際にせかされて契約した、解約を申し出たら高額なキャンセル料を請求された、見積金額の2倍を請求された、処分しないよう頼んだ物を処分された、といった内容が並びます。

2025年10月30日の見守り新鮮情報(第525号)には、次の事例があります。当初20万円ぐらいと聞いていたが、作業後に30万円と言われ、見積書はもらっていなかった。大切な書類を残す約束だったのに、アルバムや回線のつながっている電話機まで処分された。同じ号は、契約の際に作業日、具体的な作業内容、料金、支払方法、解約料を確認するよう求めています。

この助言に沿って、書面に残したい項目を表にしました。

項目確かめること
作業内容仕分け、搬出、処分、データの確認や消去のうち、どこまでが料金に入っているか
料金総額と内訳。追加料金が出る条件と上限
日程作業日と所要時間
支払い方法と時期
解約・キャンセルいつからいくらかかるか
残す物処分しない物の指定方法。パソコンやスマホ、外付けの記録媒体を含めるか

パソコンやスマホは、処分する物の中に紛れやすい機器です。中身に相続の手がかりがあるかもしれません。確かめる前に処分の対象へ入れないよう、「残す物」に書面で指定します。国民生活センターも、残す遺品と処分する遺品を明確に分け、作業にはできるだけ立ち会うよう勧めています。

複数の事業者から見積もりを取って比べることも、国民生活センターの助言です。データの消去を頼む場合は、消去の方法と、消去したことをどう証明してもらうかを見積の段階で聞いておきます。

一般廃棄物の許可と古物商の許可が要る場面

阿南市役所の庁舎
写真: Araisyohei / CC BY 4.0(Wikimedia Commons)

遺品を運び出して捨てる作業と、遺品を買い取る作業には、それぞれ許可の制度があります。

廃棄物処理法の第7条第1項は、一般廃棄物の収集または運搬を業として行おうとする者は、その区域を管轄する市町村長の許可を受けなければならないと定めています。国民生活センターの2022年の発表は、一般家庭から出る廃棄物の収集・運搬には「一般廃棄物処理業の許可」または「市区町村からの委託」が必要で、産業廃棄物処理業の許可だけの事業者とのトラブルが目立つと説明しています。広告を大きく出している事業者が許可業者とは限らないので、市区町村のホームページや窓口で許可業者を探すよう勧めています。無許可の収集には罰則もあります。同法の第25条第1項第1号は、5年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方としています。

買い取りについては、古物営業法の第3条が、古物営業を営もうとする者は都道府県公安委員会の許可を受けなければならないと定めています。国民生活センターは、遺品を買い取る事業者には「古物商の許可」が必要で、買い取りを頼むときは「古物商許可証」や「行商従業者証」を確かめるよう助言しています。許可なく営業した場合は、同法の第31条で3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金とされています。

パソコンやスマホを買い取ってもらう場合も、同じ確認が要ります。ただし、買い取りの前に、データの消去と、相続人どうしの合意を済ませておく必要があります。パソコンの処分の流れは遺品のパソコンの処分方法にあります。

契約したあとで困ったとき

日野市役所の庁舎
写真: 根川孝太郎 (Kotaro Negawa) / CC BY-SA 3.0(Wikimedia Commons)

納得できない料金を請求されたときは、国民生活センターの2022年の発表が参考になります。作業前に見積もりと違う提案をされて納得できなければ、作業前に断る。作業後に高額な料金を請求されたら、後日納得した金額で支払う意思は示しつつ、その場での支払いは断る。身の危険を感じたら、警察に連絡するのも一法とされています。見積もりのために呼んだ事業者とその場で契約した場合などは、特定商取引法の訪問販売によるクーリング・オフが適用できる可能性があるとも書かれています。可能性の話なので、実際に使えるかは窓口で確かめてください。

相談先は、全国共通の消費者ホットライン「188」です。最寄りの市区町村や都道府県の消費生活センターにつながります。契約書、見積書、広告の画面、やり取りのメモを手元に集めてから電話すると、話が早く進みます。

出典

いずれも2026年11月4日に確認しました。

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